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2010年11月

「卵」・・・後閑達雄

この句集ですが、第一回「田中裕明賞」にノミネートされたものです。
受賞された高柳克弘さんの『未踏』と甲乙付け難い意見が多く、読んだみたいと思っていたのですが、偶然に手に入れることが出来たので読ませて頂きました。diamond
後閑達雄さんとは(なんと、ようやくめぐり合えた)同じ世代の人なので、とても馴染みやすい句ばかりで、また難解句もなく、すっきりと最後まで読みことが出来ました。
栞のつげ忠雄さんが「日常よく眼にする情景・状況を、一見無造作に詠んでいるのだが、独特の直感や観察力が効いていて、時に虚をつかれたような軽い驚きにある・・・」とてもいいコメントだと思います。cat
奇をてらったり、玄人受けを狙ったり、やたら理知的であったり、スケールの大きさ、拡張高いのは嫌いするのは、僕は好きになれません。
句集は作者の一部です。
作者のプロフィールやタイトルの由来を知ってから読むと、句集の読む楽しさが倍増します。
「卵」についても同様です。病のこと、家庭のことを知って読みと、この句集の良さがずいぶん伝わってくるかと思います。scissors
日頃の日常の中から作られる「現代俳句」そのものだと思います。cat

<感銘句>
象の鼻背中に届く水遊び
消燈の窓より桜見てをりぬ
手際よきシーツ交換風薫る
雲の峰君との約のなかりけり
マフラーを君に巻き直してもらふ
雪だるま大きな釦付けてあり
日に焼けて精神科医のよく笑ふ
菜箸の先焦げてゐる花大根
首根つこ掴んで運ぶ扇風機
案山子より深く帽子を被りけり
短日や床屋帰りの耳の色
クリスマスケーキ苺をのせて切る
風光る医師の後ろに若き医師
羽抜鳥しきりに爪を噛んでをり
掌の痛き胡瓜を選びけり
七人の小人隠るる草紅葉
大根に竹串の穴ありにけり
向日葵の高さ残して枯れにけり
着ぶくれやみんな上向くエレベーター
Tシャツを押しあげてゐる聴診器
はじめから鳴き直したる法師蝉
冬空へたとへばこんなラブソング
蛍より光の返事もらひけり
黒といふ紫色のチューリップ

<主題3句>
冷蔵庫まづは卵を並べけり
にはとりの卵に羽毛山笑ふ
赤とんぼきれいな水に卵生み

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