「未踏」(高柳克弘) 前編
彼をはじめて知ったのは、僕が俳句を始めたばかり、初めて「NHK俳句」を見たときです。(2007年12月)
この番組のゲストで彼が出演されており、しかも地元出身で本(凛然たる青春)を上梓されたことを話されており、自分より一回り若い方が、俳句界の中でご活躍されていることに、とても嬉しく思いました。
そして、彼の句集がいつ出るのかと待っていたのは、僕だけではなかった筈です。
それだけ、彼の注目度はすごいものだと思います。
さて、句集ですが大きく三つに分かれます。
初期:俳句はじめたばかりで、いろんな俳人に接している時期。
中期:「俳句研究賞」を頂き、また「鷹」編集長となって、戸惑い時期。
後期、彼の句が定着された時期。
僕は初期と後期は、すんなりと入ってきたのですが、中期は難解が多かったです。
でもこの苦悩時期がないと、句集は成り立たないので、自選は相当難しかったと思います。
それから「句集」には、蝶の句が多いです。
喋々のあそぶ只中蝶生る
ゆびさきに蝶ゐしことのうすれけり
春月や羽化のはじまる草の中
鉄路越え揚羽のつばさ汚れけり
蝶ふれしところよりわれくづるるか
眉の上の蝶やしきりに何告ぐる
蝶の昼読み了へし本死にゐたり
路標なき林中蝶の生まれけり
わがつけし欅の傷や蝶生る
羽化の翅はばたかむとす草泉
つまみたる夏蝶トランプの厚さ
蟻運ぶ蝶の模様のかけらかな
高速の素質ありけり黒揚羽
揚羽追ふこころ揚羽と行つたきり
最初の2年間(2003-2004)だけで、これだけあります。
この世に生きていながら、非現実の空想世界を求めているような気がしました。
さらに、青春を謳歌している句もあり、読み手それぞれの思いをかき立ててくれます。
「木犀や同棲二年目の畳」
僕にはこんな青春がなかったら、作れない句です。いいなぁ
以前紹介した佐藤文香さん同様に、何かの賞を頂けるのではないかと思います。
期待されていた以上に、出来栄えの良い句集だと思います。
2004-2005感銘句
雨よりも人しづかなるさくらかな
ゆふざくら膝をくづしてくれぬひと
名曲に名作に夏痩せにけり
わが拳革命知らず雲の峯
空蝉(旧字)を握り潰せば紙の音
降る雪も本の活字も無音なり
如月や鳥籠昏きところなし
桜貝たくさん落ちてゐて要らず
花ふぶきつひの一片誰も知らず
揚羽追ふこころ揚羽と行ったきり
うみどりのみなましろなる帰省かな
木犀や同棲二年目の畳
(続く)
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コメント
こんばんわ。今日の俳句王国は高柳氏が登場していましたよー来週も今回に続き新進気鋭の俳人がゲストらしいです。
投稿: 海音 | 2010年1月 9日 (土) 23時28分
海音さま
明けましておめでとう御座います。

僕も「俳句王国」見させて頂きました。
また、多くの女性をとりこにしてしまいましたね
来週も若手俳人の登場、今後の俳句を背負っていく人たちの感性、価値観を学ばなくてはなりません。
海音さまも、その一員ですよ
期待しております。
投稿: 楚良 | 2010年1月11日 (月) 11時14分