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もぐら島 1

鉄道路線から外れた埋立地に向かう地下通路がある。

一時期はこの埋立地に鉄道が走るということで、値上げ屋たちがこぞって、ここのアパートやマンションを建て始めた。

しかし、新しい路線は運河一つ隔てた反対側の島を通ることになり、計画は頓挫。

マンション建設は途中で終わり、すでに移り住んでいた人々も次々と引越しして行った。

未来を見ることなくして、この島は廃墟となるだけになってしまった。

時間はたっぷりある。

近くの駅から(とは言っても30分掛かる)、歩いて来た。

この島に渡るには片側2車線の車道1本と、住民用に作られた地下通路のみである。

この間に誰も会うことはなかった。

無論、車さえすれ違うことはなかった。

本当の馬鹿でなければ、こんな島に来ることはしないだろう。

運河の下を通る地下通路に続く階段を降りて行った。

自分だけの足音だけが通路を響いた。

しかし、階段を降りてしまうと、足音は消えた。

地下通路は、どこから舞い込んだか分からない土で一杯であった。

誰か名づけたか知らないが、この島(埋立地)をもぐら島と言うようになったが、その通りだと思った。

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